Google社の新ブラウザ「Chrome」、携帯電話への搭載狙い中核部をARMプロセッサに移植
インターネット検索エンジン大手の米Google(グーグル)社は、同社が開発した新ブラウザ「Google Chrome」(グーグル・クローム、以下「Chrome」)の中核部分を、x86プロセッサに続きARMプロセッサにも移植した。2008年9月2日(米国時間)にChromeのベータ版の公開に合わせて米国カリフォルニア州マウンテン・ビューにある本社で開催した発表会で、同社の共同創設者であるSergey Brin氏は、「2~3カ月以内には、携帯電話機などの携帯型電子機器で、Chromeの全機能あるいはその一部が利用できるようになる」と述べた。
Chromeは、主にパソコンでの使用を想定して開発されたウェブ・ブラウザであり、米Microsoft社の「Internet Explorer」をはじめとする競合製品と比べて、性能や信頼性、セキュリティ機能を大幅に高めることを狙っている(参考記事:Google社が公開した新ブラウザ「Chrome」、プロセッサやメモリーのリソース効率に自信)。しかし、Google社の開発者が9月2日の発表会で語ったところによれば、Chromeやその主要技術は、携帯型電子機器にも適しているという。
Chromeの大きな特徴の1つは、「V8」と呼ぶJIT Virtual Machine型のJavaScript実行エンジンをベースとしている点だ。Google社によれば、その性能はほかのJava仮想マシンの「何倍にも達する」(同社)という。こうしたウェブ・ブラウザの性能向上は、Google社のような企業にとって、ウェブ・ベースのアプリケーション開発といった新たなチャンスにもつながる。
Google社でV8のテクニカル・リーダーを務めるLars Bak氏は、「V8を使えば、ブラウザの性能を高めたり、(ブラウザの性能を維持しながら)プロセッサの処理性能に対する要求を低減したりできる」と説明する。
Bak氏は米Sun Microsystems社在籍中に、現行のJava Ver.5の標準部品となっている「Hotspot」を含め、2つの世代にわたってJava仮想マシンを開発した人物である。同氏は、「携帯機器の消費電力を低減したければ、V8の搭載を勧めする」と述べた。さらに、ARMプロセッサが非常に多くの携帯機器に採用されていることから、「V8をARMプロセッサに移植することは、早い段階で決まっていた」(同氏)ことも明かした。
また同氏は、V8をコンパイルすることがほかのJava仮想マシンと比べて容易なことを挙げ、「今後、ARMプロセッサ以外のプロセッサへの移植も順調に進むだろう。おそらく3~4カ月で実現できるはずだ」と語った。
同発表会で同氏は、V8のブラウザ・ウィンドウ上でアイコンを動かしてその速度を計測する簡単なテストを披露し、x86プロセッサ搭載パソコン上で動作するV8エンジンの性能が、Internet ExplorerのJavaScriptエンジンの10倍以上であることを示した。
このほか、オープンソースで開発されているChrome用レンダリング・エンジン「Webkit」のテストでは、静的に生成されたウェブ・ページの読み込み速度は1ページ当たり平均77.28msだった。これに対し、Internet Explorerでは同速度が1ページ当たり平均220.64msだった。
Androidプロジェクトとの統合はあるか
Google社はこれまで、ブラウザ機能を備えた携帯電話機向け開発プラットフォーム「Android」とChromeを、それぞれ別々に開発してきた。現在のところ同社は、この2つのプロジェクトを統合する考えはないという。だが、この方針はすぐに変わる可能性もありそうだ。Google社で技術担当のプレジデントを務めるSergey Brin氏は、「ChromeとAndroidには、技術的に共有できる部分が多い。しかし、この2つのプロジェクトを統合することで、これまで並行して進めてきたそれぞれのプロジェクトの開発スピードを落としたくはない」と説明した。
ただし同氏は、「ChromeとAndroidの両方を市場に投入して一息ついた後、1~2カ月もすれば、Androidの次期バージョンについて検討を始められるようになるだろう。次期バージョンには、より多くのChromeの機能を搭載する予定だ」と述べ、「(携帯電話機向けに)Chrome Lite(Chromeの軽量版)についても考えている」ことも明かした。
同氏はさらに、現在Androidを搭載した携帯電話機のテスト中であることを明かした上で、「2008年末にはAndroidを搭載した携帯電話機が市場に投入されると考えている。試作機を使ってみたが、これにはかなり満足している」と語った。
ChromeのJavaScriptの処理速度を高めることは、ウェブ・アプリケーションの大半をJavaScriptで開発しているGoogle社にとって重要である。
Google社でプロダクト・マネジメント担当のバイス・プレジデントを務めるSundar Pichai氏は、「当社は、インターネット検索企業から、検索のみならず広告やアプリケーションも手掛ける企業へと進化している。さらに今後はChromeによって、より優れたウェブ・アプリケーションを開発できるようになるだろう」と述べた。
同社の共同創設者でプロダクト部門のプレジデントを務めるLarry Page氏は、「ブラウザの処理速度を上げれば、トラフィックは増える。それは直接、当社の利益に反映される。つまり、ユーザーがウェブ検索に費やす時間が限られたとしても、ブラウザの性能が向上すれば、検索回数はその分多くなり、それが当社の利益増につながる」と説明する。
さらに、Google社にとってChromeは、ウェブ開発のオープン・スタンダードを築くだけでなく、Microsoft社がブラウザ市場で築いてきた影響力を弱めるための戦略的手段であるという側面もある。
Page氏は、「今後、Chromeと同様に普及が見込めるブラウザの登場を期待している。より多くの選択肢の中から、ウェブ開発者がChromeをブラウザのオープン・スタンダードとして、さらに発展させてくれること望んでいる」と付け加えた。
Chromeの性能がさらに上がることで、Google社だけでなく競合企業からも、新しくより優れたウェブ向けアプリケーションが生み出される可能性が高まる。
Bak氏は、「現在、コンピュータ集約型のウェブ・アプリケーションには、タスクの実行をサーバーに依頼するものがあるが、この場合はサーバーの処理結果を受け取るまでの時間が、ネットワークのレイテンシに左右されてしまう。これに対しChromeは、クライアント側ですべてのアプリケーションを実行できる」と解説する。
Chromeのベータ版は現在、同社のウェブ・サイトから無償でダウンロードできる。Chromeベータ版のサイズは7Mバイトで、韓国語や日本語など43の言語に対応している。
PR










