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第2部 センサー技術、非接触操作で利便性向上、新たなUIの提案相次ぐ

 「CEATEC JAPAN 2008」では、センサー技術を活用した新たなユーザー・インターフェース(UI)の提案が相次いだ。例えば、リモコンの代わりに手を動かして操作するテレビ受像機や、タッチ・パッドに触れずに画面上のマウス・ポインタを動かすパソコンなどである。機械式スイッチやタッチ・パネルを使った機器操作から、手の動きで指示する非接触操作へ、各社が提案したユーザー・インターフェースはいずれも、デジタルAV機器やパソコンの操作性を高める可能性を秘めたものだ。

ジェスチャで機器を操作

 パナソニック(旧松下電器産業)は、両手を空間で動かす「空間ジェスチャ」で操作できるテレビ受像機を試作し、これを使ったデモを見せた(図1)。テレビの画面上には円形のポインタが2つ表示されており、このポインタを手の動きで操作することで画面上の画像を動かす仕組みだ。具体的には、両手を回すと画像の向きを360度自由に変えられ、横に動かすと画像を移動できる。さらに、テレビに向かって前後方向に手を動かすと、画像を拡大したり縮小したりできる。
 

図1

図1 ジェスチャで操作するテレビ受像機
(a)はパナソニックの展示、(b)は日立製作所の展示である。手を動かして、テレビ画面上の画像を動かしたり、チャネルを切り替えたりしていた。

 

 同社がこのようなユーザー・インターフェースを開発した背景は、主に2つある。1つ目は、テレビにさまざまな機能が新たに搭載されるに伴って、従来型のリモコンでは、操作性を高めるのに限界が生じてきたこと。もう1つは、テレビの大画面化である。大画面テレビならば、複数の画像を表示しておいて、その中から1つを選び出して表示するといった、従来とは違った見せ方が可能になる。同社は、大画面化に伴ってユーザー・インターフェースが多様化すると考えており、「当社のセンサー技術を使ったユーザー・インターフェースを、新たに提案していきたい」(同社の説明員)と説明した。

 空間ジェスチャ機能は、赤外線LEDと同社独自の距離測定用画像センサーの組み合わせで実現した。基本的には、操作者の輪郭情報を基に、手の動きを算出する仕組みである。まず、複数の遠赤外線LEDからパルス状の遠赤外線を放射する。操作者に反射して戻ってきた光(反射光)を、画素数が160×120ピクセルの画像センサーで検出し、到達時間をそれぞれの画素ごとに算出する。到達時間を距離情報に換算すれば、座標情報とそれぞれの座標での距離情報、すなわち操作者の輪郭が分かるわけだ。LEDの反射光を検出可能な距離範囲は1.5~7.5mで、対応するフレーム速度は12フレーム/秒である。

 このほか日立製作所も同様のデモを見せていた。すなわち、手を動かすことで、テレビ受像機を操作するデモである。手を細かく振るとテレビの電源をオン/オフできるほか、手で円を描くことで、チャネルを切り替えたり、音量を調整したりできる。「このユーザー・インターフェースを採用すれば、直感的なテレビ操作が可能になる。しかも、リモコンを探したり、離れた場所に取りに行ったりする手間がなくなるメリットがある」(同社の説明員)。仕組みの詳細は明らかにしないが、LEDと画像センサーを組み合わせたものだという。

タッチ・パッドに触れずに操作

 アルプス電機と村田製作所は、タッチ・パッドに触れずにパソコン画面上のマウス・ポインタや画像を操作するデモを、それぞれ見せていた。「非接触操作で、使い勝手を高めよう」というコンセプトは両社とも同じだが、採用したセンサー技術は異なる。

 アルプス電機は、微小な静電容量を検出するセンサー技術で実現した。分解能が100a(aは10-18)Fと小さい静電容量センサーを、ノート・パソコンのタッチ・パッド部分に組み込んだ(図2)。センサーの実装面積はおよそ6cm×12cmである。CEATEC JAPAN 2007では、実装面積が30cm×30cmのセンサーを使ったデモを見せていたが、今回は大幅な小型化を図った。「実際の機器に組み込める大きさになった」(同社の説明員)。
 

図2

図2 静電容量センサーを組み込んだパソコン
アルプス電気が展示した。タッチ・パッドに触れずに、パソコンを操作できる。

 

 一般に、センサーを小型化すると検出感度が低下してしまう。しかし、「センサーから3~5cm離れた位置で手を動かしたときの、わずかな容量変化を検出可能なレベルは確保した」(同説明員)。センサー形状の改良や、検出した信号を処理するアルゴリズムの工夫で、検出感度の低下を防いだという。微小な静電容量を検出する回路技術そのものは、昨年と大きく変わらない。すなわち、静電容量センサーから差動形式で電気信号を取り出し、差動伝送回路で送る。その後、同相雑音をフィルタで除去した後に増幅するという処理の流れだ。

 一方、村田製作所は、人体が発するわずかな赤外線を検出する焦電素子を用いた「焦電型赤外線センサー」を使った。2つの赤外線センサーを使用したモジュールに、手をかざして水平面内で縦方向や横方向に動かすことで、パソコン画面上の画像を拡大したり、表示する画像を切り替えたりするデモを見せた(図3)。手を動かす方向だけでなく、スピードも検出する。例えば今回のデモでは、左方向に素早く動かすと1枚だけ画像を切り替え、ゆっくり動かすと5枚連続で画像を切り替える。焦電型赤外線センサーはこれまで、エアコンなどで人のいる場所を検出する用途や、防犯装置などで使われてきた。「新たな活用分野として、ユーザー・インターフェースの用途にも使えることを訴求したい」(同社の説明員)。
 

図3

図3 焦電型赤外線センサーのデモ
赤外線センサーを使った新たなユーザー・インターフェースのデモである。村田製作所が展示した。プレゼンテーション資料を素早く切り替えたり、画面上のポインタを動かしたりしていた。

 

形状/表示を変えるリモコン

 宅内で使うさまざまな家電のリモコンに関しても、新たな提案がいくつかあった。アルプス電機は、入力ボタンが飛び出たり凹んだりするリモコンと、表示が変わるリモコンを展示した。「リモコンが形状または表示を変えながら、ユーザー操作をリードしていくという、新たなコンセプトで開発した」(同社の説明員)。

 入力ボタンが飛び出すリモコンには、「電源オン/オフ」、「チャネルの選択」といった表示がまったくない。筐体に9つの入力ボタンが組み込まれているだけである。テレビの画面にリモコンの操作画面を表示し、それぞれのボタンがどのような役割を担当しているかをユーザーに示す。ユーザーは、テレビの画面を見ながらリモコンを操作するわけだ。1つのリモコンで、複数の家電を操作することを想定しているものの、入力ボタンの数や、それぞれのボタンの役割は家電ごとに異なる。何の工夫も施さなければ、操作しにくい。そこで、操作を受け付けているボタンのみ飛び出た状態にしておくという解決策を採った。

 一方の表示を変えるリモコンは、宅内にあるすべての家電を1つのリモコンで統合制御することを目的にする(図4)。9つの入力ボタンがあり、各ボタンの表示内容が変わる仕組みだ。メニューを表示するモードでは、「エアコン」や「テレビ」、「ライト」などが各ボタンに表示されている。この状態で、「テレビ」ボタンを押すと各ボタンの表示が、「電源オン/オフ」などテレビを制御するための内容に切り替わる。
 

図4

図4 表示内容を変えるリモコン
アルプス電気が展示した。宅内のさまざまな家電の統合制御に向けたもので、入力ボタンを押した内容に応じて、表示が次々に変わる。

 

 OKIは、操作対象の家電の状態を音声で案内するリモコンを試作した(図5)。音声合成機能と無線機能を搭載したリモコンで、家電側と情報をやりとりする。「さまざまな活用例があると考えている」(同社の説明員)という。例えば、エアコンの電源をオンにする入力ボタンが押されたら、実際に稼働させてから「エアコンがオンになりました」と音声で案内する。また、リモコンが紛失したときにエアコン側のボタンを押すと、リモコンから音楽が流れてどこにあるかを知らせるといった使い方もある。
 

図5

図5 音声案内リモコン
OKIが展示した音声案内リモコンである。家電の状態をリモコンが音声で案内する。

 

 このほか、センサー関連の展示としては、例えばエプソントヨコムの絶対圧センサーや、米OmniVision Tech-nologies社のCMOSセンサーなどの展示があった(CMOSセンサーについて詳しくは別掲記事「BSI型のCMOSセンサーが登場」を参照)。エプソントヨコムの絶対圧センサーは、同社従来品と同等の性能を維持しつつ小型化を図ったことが特徴だ。同社従来品に比べて、体積を60%削減した。圧力の測定分解能は0.1Paで、高度に換算するとわずか1cmの変化に相当する。ブースでは、この圧力センサーを宅内向けのセキュリティ対策に活用したデモを見せた。密閉された部屋のドアや窓を開けたときの、わずかな気圧の変化を圧力センサーで検知し、アラームを鳴らすというものである。

BSI型のCMOSセンサーが登場

 米OmniVision Technologies社は、携帯電話機などに向けたCMOSセンサー3品種などを展示した。1/4インチ型で504万画素の「OV5642」と、1/3.2インチ型で800万画素の「OV8810」と同「OV8812」である。画素間隔が1.4μmと小さい。

 「世界市場では200万画素、日本では300万画素のCMOSセンサーを搭載した携帯電話機が主流だ。2009年にはそれぞれ300万画素、500万画素に移行する」(香港OmniVision Trading社でCountry Manager of Japanを務める薄井明英氏)。

 しかしながら、従来の方式のまま画素数を300万画素から500万画素に高めると、画素間隔が1.75 μmから1.4μmに狭まり、光量が不足する。「撮影シーンを考えると、感度が不足する」(同氏)。そこでBSI(Backside Illumination)技術を用いた。BSIではSi(シリコン)ダイの表面からでなく、裏面から光信号を取り込む。これにより、センサー部の上に形成された金属配線層や誘電層など光子を損失する原因を排除でき、開口率を向上できた。

 携帯電話機向けでは、特定の被写体よりも、全景がまんべんなく写ることが求められる。そこで、OV 5642には「TrueFocus」技術(EDoF技術)を組み込み、被写界深度を50cm~∞に広げた。従来のパンフォーカス・レンズを用いた場合は、同80cm~∞である。「2次元バーコードを取り込む場合のほか、自動車内に設置したカメラで動いている車内から道路標識を自動認識する用途にも利用できる」(同氏)。

 TrueFocus技術では、さまざまな距離からレンズに到達する光をセンサー表面に結像させず、一様に適度にぼやけた状態にする。その後、ソフトウエア処理を施して、50cm~∞という範囲に焦点が合った画像を生成する。同時に手ぶれ補正技術も適用する。OV5642は、CMOSセンサーと、TrueFocusを実現するImage Signal Processor(ISP)を1チップにまとめたSoCである。専用レンズは、コニカミノルタと台湾Largan Precision社が製造する。

 OV5642は2008年12月にサンプル出荷を開始し、2009年4月に量産出荷を始める。OV8810は2008年11月にサンプル出荷、2009年3月に量産出荷を開始する。

 なお、画素間隔を同等に保ったままBSI技術を適用すれば感度が高まり、より暗い場所でも撮影が可能になる。同社は、画素間隔を1.75μmに保った500万画素のCMOSセンサーを開発中であるとした。2009年9月ごろにサンプルを公開する見込みだ。

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