MITが開発した新IDタグ「Bokode」、ぼやけた画像を利用して情報を数m伝達
米Massachusetts Institute of Technology(MIT)が、バーコードと同等の安全性とRFIDタグと同等の大容量性を兼ね備えた新しいIDタグを開発した。2009年8月に米ルイジアナ州ニューオーリンズ市で開催されたコンピュータ・グラフィックス関連の国際会議、展示会である「SIGGRAPH 2009」で披露されたものだ。
「Bokode」と名付けられたこのIDタグは、携帯電話機内蔵のカメラなどで読み取り可能だ(図1)。このIDタグのプロトタイプ版では、背面からLED光源で照らされた「マイクロドット」の上にプラスチック・レンズが配置されている。そのため、表面から1mm程度隆起した構造を採っていたが、今後は反射型ホログラムを使用して平面化を目指す。

Bokodeの大きさ(写真の赤い円の直径)は約3mmである。一方、従来の2次元バーコードは約30mm角と大きい。「bokode」に格納されたデータは、レンズの焦点を合わせずに数m離れた地点から読み取れる。
Bokodeという名称は、日本語に由来するという。カメラの焦点が合っていない場合に輪郭が丸くぼやける状態を表す状態のことだ。MITの研究チームが開発したBokode技術では、カメラのレンズの焦点が合わないと画像がぼやける、というこのプロセスを逆手に取り、プラスチック・レンズを透過した光線の角度に合わせて、画像をぼやけた状態でコード化し、ドットに記録する。レンズの焦点を合わせずにこのドットを撮影すると再び像を結び、元の画像を復元できる仕組みだ。
Bokodeに保存されたデータは、数m離れた場所からでも、レンズの焦点を合わせずに撮影すると、読み取れる。
MITの博士研究員であるAnkit Mohan氏は、「従来のバーコードでは、情報を空間的、時間的、もしくはスペクトル的にコード化するのに対し、Bokodeでは角度でコード化する。つまり、Bokodeから異なる方向に向かって広がる光線を利用して異なる情報をコード化できるというわけだ。角度情報は、肉眼では認識できないが、レンズの焦点を外した状態で撮影すると、容易に読み取れる」と説明する。逆に言えば、カメラとBokodeの相対角度に応じた情報を提供できる。
Bokodeのプロトタイプは、LED光源の上にマイクロドットを配置し、さらにその上に幅3mmのプラスチック・レンズを搭載する。MITの研究チームは現在、ホログラムを使用したBokodeの作成にも取り組んでいる。ホログラム版Bokodeは、背面光源を使わずに角度情報をコード化するため、フレネル・レンズのような平面状のレンズを使用できる。
Mohan氏は「現在、プラスチック・レンズの下に設置するマイクロドットへ情報をコード化する際には、高い解像度で印刷したマスクを使用している。このほかに、ホログラムを使用した、平面状のパッシブ・タグのプロトタイプも開発中だ」と話す。
Bokodeは数千ビットもの情報を保存できる一方で、リーダーを使わない限り、情報を読み取られる心配がない。そのため、Bokode技術の主要用途としては、クレジット・カードが候補に挙がっているという。MITはほかの用途への採用も視野に入れて、同技術の研究を進めている。
「Bokodeの応用例として、拡張現実(Augmented Reality:AR)やモーション・キャプチャ、ユーザー・インタラクションに向けて積極的に展開が考えられる」と、Mohan氏は話している。
Bokode技術を導入した機器の用途としては、教室内でのプレゼンテーションやビジネス会議、テレビ・ゲーム、モーション・キャプチャ・システムなどが考えられる。一方、拡張現実では、スーパーマーケットなどの店頭に並べられた商品の上にリーダーをかざすと、Bokodeに記録された栄養成分の情報を読み取れる、といった用途が検討されている。
さらに、Bokodeを利用することで、非常に高い精度のモーション・キャプチャーが可能となる。従来のモーション・キャプチャ技術では関節の移動速度しか測定できないが、Bokodeを貼り付けたボディ・スーツを着用すれば、関節の速度だけでなく、視線に対する関節の相対角度も検出できるからだ。
MITが実施するBokode研究は、フィンランドNokia社と韓国Samsung Electronics社、非営利組織である米Alfred P. Sloan Foundationから資金提供を受けている。
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