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Microsoft社の青色LED採用マウス、数々の工夫で利用環境を問わず使える

 米Microsoft社の最新マウスは、利用可能な環境を広げたり、ポインティング精度を高めたりするための数々の新技術を採用し、マウスの歴史に新たな扉を開いた。現在の主要なユーザー・インターフェースとなっているマウスのプロトタイプが登場したのは1960年代後半のことである。それ以来、われわれとマウスの付き合いは長期間続いてきた。マウスの持続的な成功は、技術改善のたまものだ。マウスは何と言っても安価で、しかも直感的に操作できるという特長がある。

 新製品開発に必要なのは、確立された技術だけではない。革新的な技術も当然ながら求められる。同社の最新マウスである「BlueTrackファミリ」は、従来と異なる光源や新たな光学技術といった新しいアプローチを採用した。通常、光学式マウスは、光源に赤色光や赤外線を使うが、このマウスはその名の通り、青色光を利用している。

光源/受光部の配置も工夫

 光源の色は違うが、光学式マウスのメカニズムは、これまでとほぼ同じである。光学式マウスをある場所(トラッキング面)に置くと、トラッキング面に対して角度を付けて実装されたLEDが、レンズを介してトラッキング面に光を照射する。このとき一般的には、LEDの点光源をレンズを使って広い領域を照らす光源に変換している。

 トラッキング面で反射して戻ってきた光は、角度を付けて設置したもう1枚のレンズに入射する。このレンズによって、CMOSイメージ・センサーへと集光される仕組みである。CMOSイメージ・センサーの解像度は比較的低い。しかし、トラッキング面の細かな模様を読み取り、マウスの動きに応じてその模様が変化する様子から相対的な移動方向を判断することは可能だ。光学式マウスは、通りすぎる景色を観察して、移動距離や方向を識別している。

 しかし光学式マウスの応答は、トラッキング面の材質によって大きな差が生じてしまう。トラッキング面に表面変化や模様がなければ、マウスを少し動かしたとしても、パソコン画面上のカーソルは微動だにしない。従ってこれまでは、マウスを使える場所は限定されていた。これが光学式マウスの大きな欠点とされてきた。

 そこでMicrosoft社は光学式マウスを使用可能な環境を広げるために、(1)赤色/赤外線LED(レーザーを使用したマウスもある)の代わりに青色LEDを採用したことと、(2)新たな光学技術を組み込むという2つの解決策を採用した。青色LEDを採用することで、コントラスト比の高い画像を得られるようになった。さらに同社は、光源であるLEDの出力光を拡散させて照射した領域の光束の均一性を高めることに成功した。さらに、反射光を効率よく受光できるよう、光源であるLEDと受光側のCMOSイメージ・センサーの配置を工夫した。

画像処理ASICが中心的な役割

 あちこちに取り付けられている隠しネジを1つずつ外して、マウスの筐体を開けた(図1)。すると、リード線で接続されたシンプルな光学部品が現れた。これが、トラッキング用の青色LEDである。青色LEDは、光を拡散させるために、乳白色で半透明なカプセル状の光学部品に格納されている。トラッキング用LEDのほかにも、青色LEDがいくつか搭載されているが、これらは製品ロゴを照らしたり、マウスの筐体を縁取るように配置した導光板から光を出力して演出したりするなどの装飾用に使われている。

図1

図1 新たな光学技術を採用して利用可能環境を広げた
上図が光学/ロジック回路部で、下図がトラック・ホイールを実現する機構である。光源である青色LEDの出力光を拡散させて光束の均一性を高めた、反射した光を効率よく受光できるように光源と受光側のCMOSイメージ・センサーの配置を工夫したりした。

 

 受光側モジュールは、CMOSイメージ・センサーと画像処理プロセッサで構成した。このプロセッサは、Microsoft社 ブランドのASICのようだ。反射光はCMOSイメージ・センサーのパッケージに作り込んだ「窓」を介して、24×24画素のセンサーに達する。イメージ・センサーの解像度は、一般的な画像処理用途であれば低すぎるが、マウスのトラッキング用途であれば十分である。

 ASICは画像の読み取りだけでなく、CMOSイメージ・センサーの制御や画像処理の役割も担当している。これらの作業はすべて、単3型電池2本分の電力でまかなわなくてはならない。そのため画素数を少なくして、消費電力を抑えている。さらに、少ない画素数は同じ消費電力で処理可能なフレーム数を増やすのにも一役買っているようだ。なお、ASICには、プログラム・コードを格納する用途に向けて、米Microchip社の32KビットのEEPROM「24AA32A1」が接続されている。

 BlueTrackマウスで、光学部品と同様に重要な役割を果たしているのがスクロール・ホイールである。同社は、このスクロール・ホイールにも独自の工夫を施した。プラスチック製のホイール(車輪)は、光学チョッパの役割を果たしており、LEDとフォト・トランジスタでホイールの動きを検出する。

 このほかにも、マウスには数え切れないほどの部品が収められている。しかし、構造はシンプルだ。例えば、マウスのクリック動作は左右のボタンを押すことで機能する。スクロール・ホイールを押すか、または傾けることで特殊な機能が起動する仕組みを採用している。

 ASICのほかにロジックICは見当たらない。このため各種スイッチの制御や、スクロール・ホイール情報の処理、USBインターフェース制御もこの1つのASICがすべて担当していると推測できる。

無線接続には独自仕様を採用

 最後に、このマウスを完成させる上で不可欠な半導体チップを見てみよう。BlueTrackマウスは、ケーブル不要で机の上がすっきり片付く、人気の無線接続を採用している(図2)。ホストのパソコンでは、USB端子に接続する小型のドングルを使って、マウスが操作されたデータをすべて受信する。

図2

図2 ホスト側のUSBドングル
無線通信には2.4GHz帯を使う。ノルウェーNordic Semiconductor社の独自仕様を採用した。

 

 興味深いことにこのドングルに搭載されている無線チップは、USBの業界団体が策定したワイヤレスUSB規格に準拠していないようだ。無線接続の両端に当たるマウス側とホスト側のどちらにも、ノルウェーのNordic Semiconductor社の独自仕様を採用した2.4GHz対応無線トランシーバICが使われている。ただし、マウス側とホスト側で、採用した品種は異なる。マウス側には同社の「nRF24L01」、ホスト・パソコンに接続するUSB側には「nRF24LU1」が搭載されている。これらのICはEEPROMを集積しているため、メモリーを外付けする必要はない。

 BlueTrackマウスでは、電子部品の大半を2つの大きなプリント基板に実装した。スクロール・ホイールやスイッチなどは、2つのうち片方の特殊形状の基板に搭載されている。プラスチックで封止された部品が製品全体で10個程度使われており、それぞれが小型ネジで接続または固定されている。

 マウスが誕生してから約40年が経つ。その間、マウスは多くのパソコン・ユーザーにとって不可欠なポインティング・デバイスとして進化を続けてきた。歴史を振り返ると、ゴム製ボールを使ったマウスに代わって、赤色または赤外線の光源を使った光学式マウスが普及してきた。そして今、青色光源と新たな光学技術を採用したマウスが登場した。使用可能な環境を広げたことに加えて、トラッキング性能を高めたBlueTrackマウスは、マウスの歴史に新しい1ページを刻むことになるだろう。

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