
第4部 太陽電池 色素増感太陽電池が躍進、20mのフィルム状Si太陽電池も
「CEATEC 2009」では太陽電池や燃料電池、2次電池、直流給電などエネルギ分野に関するさまざまな展示も注目を集めた。最も目立った分野は太陽電池、それも色素増感太陽電池だろう。
色素増感太陽電池は、Si(シリコン)を用いた太陽電池とは異なり、常温、常圧で製造でき、薄く軽いモジュールを実現できるという利点がある。ただし、変換効率はSi太陽電池よりも低く、素子内部に液体を用いることなどが原因で耐環境性に課題があった。1991年に基本的な素子構造が提案された後、長い間、研究開発が続いてきたが、いよいよこれらの欠点を解消し、実用化に向けた動きが活発化してきた。
蛍光灯下で効率20%を実現
Si太陽電池では、半導体のバンドギャップによって、吸収できる光の波長の範囲が決まる。一方、色素増感太陽電池では、色素によって利用できる光の波長が決まり、色素を選ぶことでさまざまな波長の光に対応できる。
Si太陽電池では変換効率が低下する微弱な光でも色素増感太陽電池の効率は低下しにくい。このため、室内で発電し、機器に給電するという用途が考えられてきた。
ロームは蛍光灯下での変換効率を高め、5mm角の素子を用いて3330lxの蛍光灯下での変換効率20.25%を達成した*1)。短絡電流密度(JSC)は0.214mA/cm2、開放電圧(VOC)は0.523Vであるという。
人感センサーや照度センサーを組み込んだ防犯モニター用の電源や、温度センサーを内蔵する空調モニター用の電源などとして利用でき、室内センサー・ネットワークの実現に役立つという。このほか、ワイヤレス・マウスや携帯電話機、ヘッドホンなど消費電力の小さな機器への実装が考えられるとした。壁掛け時計に組み込んだ試作品のほか、FeRAM(強誘電体メモリー)を内蔵する不揮発論理回路を用いたカウンタ回路と色素増感太陽電池を組み合わせた実動デモを展示した。
印刷法で製造し、薄膜電極にはTiO2(二酸化チタン)を用いた。色素の種類については明らかにしていない。
色素増感太陽電池は、使用する色素を変更することで、多彩な色彩を実現できる。今回は黄色や赤色の色素を使って扇子のイメージを再現したモックアップ品も見せた(図1)。「電極を接続すれば動作する」(説明員)。

手前2つの「扇子」に電極を接続すれば、茶色、黄色、灰色の部分がいずれも色素増感太陽電池として機能する。
TDKは多色化と絵柄の表現に注力した(図2)。フィルム基板上に形成しているため、軽量であるという。スクリーン印刷で製造し、絵柄を兼ねる表面電極はAg(銀)ペーストで形成した。TDKは今回出展した色素増感太陽電池と同じ方式で変換効率7.9%を達成している。ただし展示品では絵柄を描くために電極の間隔が広く、抵抗が高いため、変換効率はこれよりも下がっているとした。

寸法は8cm×5cm。ヨウ化物イオンを溶かした電解質が薄い黄色を帯びているため、青の色素を使うと、緑色のパネルになる。
耐久性を高める
日本写真印刷は、耐久性が高い色素増感太陽電池を展示した。島根県産業技術センターが2004年から始めたセルの構造と増感用色素の開発に、2008年から加わった形だ。12cm角パネルの変換効率は6.0%(開口部では6.7%)である。2010年初頭からサンプル出荷を開始し、2012年には量産出荷を始めるとした。製造技術にはシルクスクリーン印刷を用いた。
最大の開発目標は屋外でも実用可能な耐久性の確保である。12cm角パネルでは、屋外暴露試験(約300日)後の性能保持率が95%以上、85℃と−45℃の温度サイクル試験(200サイクル)後の性能保持率も95%以上だとした。このほか、多色化や半透明化を実現することで、住宅や自動車の内装、外装品に利用することや、小サイズのパネルを複数個連結することで折りたたみ可能とする目標がある(図3)。携帯端末機の補助電源やウエアラブル用途が狙えるという。

耐久性を第一の開発目標としているが、多色化や疑似フレキシブル化も進めている。
屋外を狙う
フジクラは、他社とは異なり、屋内ではなく屋外で色素増感太陽電池を役立てようとしている。強度を高めるためにガラス基板を用い、20cm角のセルを16枚組み合わせたモジュールを展示した(図4)。モジュールの変換効率は7.1%、開放電圧は0.5V〜0.8Vだとした。

屋外での利用を想定するため、Si太陽電池と似たようなモジュール構成を採っている。
「製造時の精度が高くないと、封止材の位置決めに問題が生じ、劣化や液漏れが生じる。当社はプリント配線板をスクリーン印刷で量産しているため、この技術を利用し、電極を含めたセルを印刷技術で製造した」(フジクラ環境・エネルギー研究所太陽光発電研究室の岡田顕一氏)。現在、試作した256枚のセルの耐久試験を千葉県で続けているが、試験開始後6カ月経過した現在のところ、これらの問題は起きていないとした。
今後は屋外利用を目指し、出力1W当たり100円までコスト低下を狙うという。
蓄電デバイスと組み合わせる
太陽誘電は、色素増感太陽電池と薄型のリチウムイオン・キャパシタを組み合わせた充電器の試作品を展示した(図5)。これら2つの素子を組み合わせたモジュールは世界初だと主張する。

薄型の色素増感太陽電池と、薄型のリチウムイオン・キャパシタを組み合わせることで、合計1mmの厚さに実装した。
この充電器の寸法は151mm×102mm×1mmで、薄板状である。表面に8枚の色素増感太陽電池を実装し、静電容量1.5Fで端子間電圧3.8Vのリチウムイオン・キャパシタを内蔵する。
太陽電池の基板にはプラスチック材を用いた。「このような充電器を使うことで、電力を『貯める』場所と『使う』場所を切り離せる。太陽電池を実装できるほどの表面積がない小型の機器でも、太陽光や室内光で発電した電力を利用できるようになる」(太陽誘電の新事業企画推進室新事業企画推進部で次長を務める石田克英氏)という。会場では電動ミニカーと充電器をUSBで接続し、充電後に走行させるデモを見せた。
内蔵の薄型リチウムイオン・キャパシタ「LIC2135F 3R8105」は、太陽誘電と同社の子会社である昭栄エレクトロニクスが共同開発した。寸法は21mm×35mm×0.45mm。「急速放電が必要ない用途に向けたため、内部抵抗は1.5Ωと大きい」(昭栄エレクトロニクスの開発本部開発部で次長を務める名倉哲氏)。このほか、静電容量や寸法、内部抵抗が異なる2品種を展示した。
「薄型でなおかつパワー密度が要求される用途に向けて内部抵抗が80mΩと小さい、ポリアセンを用いたキャパシタも製品化しており、今回リフロー工程に対応した品種を開発した」(同氏)。ポリアセンは、複数のベンゼン環が直線状に縮合した構造を採る炭化水素の総称。アモルファス構造を形成するため、分子の表面以外に分子内部にも電荷を蓄積できる。このため、体積当たりの容量を電気2重層キャパシタよりも高められることが特長だという。
ロール・ツー・ロール法で製造
色素増感太陽電池以外では、ロール・ツー・ロール(R2R)法で製造した多結晶Si太陽電池と、携帯電話機などを狙った小型の多結晶Si太陽電池が関心を集めていた。
TDKはR2R法で製造したフレキシブルな多結晶Si太陽電池を展示した(図6)。幅23mm×長さ20mのフィルム状であり、ラミネート加工前の厚さは0.2mmである。セルの変換効率は約10%、モジュールでは7%〜8%とした。太陽光下での短絡電流密度は約15mA/cm2、開放電圧は約0.95Vである。

フィルム状の多結晶Si太陽電池を出展した。幅23mm×長さ20mのものも見せた。
「簡易ラミネート加工を施したとしても厚さは0.4mm程度にとどまるため、軽量である。低照度下での性能が高いため、携帯電話機への内蔵はもちろん、従来のような屋外での発電まで幅広い用途が狙える」(TDKヘッドビジネスグループ薄膜デバイス統括部PVデバイスグループ商品技術Teamの藤岡裕一氏)とした。今後はセルの変換効率を17%まで高めることが目標だという。
TDKはこのフレキシブル太陽電池とポリマー状のリチウムイオン2次電池を内蔵したカード型無線モジュールも展示した。コイン型1次電池を使うと厚さが9mm程度になるが、TDKの構成では2mmに抑えられるとした。
300MHz帯の微弱電波を用い、最大10mまで9600ビット/秒の速度でデータを伝送できる。「入退室管理やパソコンの自動ロック機能などを実現することを考えたため、数十ビット程度のデータが送れればよい。IDカードは、表面に氏名などを書き込む必要があるため、変換効率は低くなるが白いプラスチックで覆った」(説明員)という。それでも500lxの照明があれば充電可能とした。無線部の消費電力は10μWと小さいため、内蔵リチウムイオン2次電池が満充電であれば、2秒ごとにデータを送信したとしても、約2年間IDカードとして機能する。
2010年には量産を開始する。すでにパソコンをロックする専用カード向けにセキュリティ関連のメーカーから量産時の受注を受けているという。
ケータイ用太陽電池も進化
京セラとシャープはそれぞれ携帯電話機への採用を主眼に置いた小型の太陽電池パネルを展示した。
京セラのセルは寸法が65.5mm×41mm×0.7mmであり、出力は約350mWだという。京セラは、住宅用の太陽電池モジュールに向けて、太陽電池セルの表面に配置する電極を裏面に配置することで、太陽光の受光面積を広げ、変換効率を高めたバックコンタクト・セルを開発しており、多結晶Si太陽電池で変換効率18.5%を達成している。2010年から順次製品化するという。今回は、バックコンタクト・セルを携帯電話機向けに適用した。これは、携帯電話機ではセル面積が限られるため、変換効率をできるだけ高める手法が必要だからだとした。
携帯電話機向け太陽電池パネルを2009年5月に発売しているシャープも、変換効率を高めるために、京セラと同様の手法を適用した。従来の67.5mm×41mm×0.8mmのセルで300mWだった最大出力を、65.5mm×41mm×0.6mmのセルで450mWまで高められたという。シャープは同パネルを三菱自動車の電気自動車「iMiEV」の屋根部分に約400枚、曲面状に実装したところも展示した(図7)。出力は約180Wであるとした。「これだけの出力があれば、室内の換気などにとどまらず、走行に必要なエネルギにも利用できると考えている」(説明員)。

シャープの多結晶Si太陽電池を三菱自動車の電機自動車「iMiEV」の屋根に搭載した。携帯電話機などに用いることを想定する電池を約400枚並べた。同電池は表面電極の配置を工夫して、出力を450mWまで高めている。
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