
第1部 幾何学的スケーリングを超えた先(3)
第1部 幾何学的スケーリングを超えた先(1)と
第1部 幾何学的スケーリングを超えた先(2)の続き。
新材料融合の動きは加速
以上に挙げたテクノロジ・ブースタとは全く違った視点から半導体の性能や付加価値を高めようという研究も、現在進んでいる。ロジック回路の世界では今まで使われてこなかった、磁性材料や強誘電体材料を、ロジック回路に導入するものだ。「MRAM(Magneto-resistive Random Access Memory)」や「FeRAM(Ferro Electric Random Access Memory)」といった次世代メモリーの材料をロジック回路に展開したわけだ。
磁性材料や強誘電体材料は、今までにロジック回路に使われてきた半導体材料にはない性質がある。例えば、磁性材料は、外部磁界の方向を変えることで、内部の磁化方向が変わり、抵抗値が変化する。また、強誘電体は外部から電界を印加することで分極方向が変わる。これらの材料は、内部の状態を変えられて、しかもその状態を保持できることが特長である。
用途は主に2つある。1つは、トランジスタのしきい値電圧Vthのばらつきが引き起こす悪影響への対策。Vthの変化に対して、磁性材料や強誘電体材料の状態をうまく合わせることで、Vthの変化の影響を極力抑えようというアイデアである。もう1つは、状態を保持する、すなわち不揮発性であるという特長を生かして、回路全体の消費電力を削減しようというものだ。前者は、微細化を可能な限り続けることを狙ったもの、後者は、微細化に頼らないMOS FETの高付加価値化と位置付けられる。
ロジック回路とこれらの新材料を融合する際に重要なポイントとして、トランジスタ特性を劣化させないという点が挙げられる。Si材料を使った既存のMOS FETとうまく適合させることが大切だ。そして、高い歩留まりで量産できなければ、商用の製品とはなり得ない。強誘電体や磁性材料は、ロジック回路に組み合わせる材料として、これらの要求事項をクリアできるものと見られている。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が策定した「電子・情報技術分野の技術ロードマップ 2009」には、「スピン・トランジスタ」や「単電子トランジスタ」、「有機トランジスタ」、「光トランジスタ」といった魅惑的なキーワードが並ぶ。こういった新機構のトランジスタは数多くある。しかし、既存のSi材料トランジスタと適合することや、現実的なコストで既存のSi材料トランジスタと置き換えられること、高い歩留まりで量産できることといった観点から見ると、将来の見通しははっきりしていない。 第2部では、強誘電体材料と磁性材料の活用事例に焦点を当てる。まず、Vthばらつきの対策に向けた活用例を紹介する。その後、不揮発性という特長を生かして、回路の消費電力を削減しようという研究開発を取り上げる。強誘電体材料や磁性材料のほか、金属イオンの析出/溶解現象を不揮発スイッチに利用した研究開発も紹介する。
第2部と第3部は「EE Times Japan 電子版 3月号」(3月10日発行)に、第1部と合わせて掲載します。ぜひお読みください。
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