記事一覧
最新ニュース

【ISSCC 2010】アナログ技術の目玉はこれだ

Analog / Power
図1

 半導体関連の国際学会「ISSCC(IEEE International Solid-State Circuits Conference)」では、毎年、ほとんどが「デジタル」に関する発表で埋まっている。新しい製造プロセスの開発や微細化、新型のプロセッサやメモリーなどが特長だ。

 だが、ISSCCの発表内容には意外なほどしっかりとアナログ技術が存在感を示している。回路やデータ・コンバータ、電源、センサー、MEMS、60GHzを超える周波数の無線技術、昆虫に取り付けるRFID、データ収集、ソフトウエア無線(SDR)、テスト/測定、統合型ワイヤレス機能など、網羅する範囲も広い。詳細に調べれば、非デジタルICに関心の高い技術者にとっても興味の尽きない学会であることが分かる。

 今回のISSCC(2010年2月7日~11日、米カリフォルニア州サンフランシスコ)でも、アナログ技術の発表は少なくない。基礎的な内容としては、例えばチョッパ・ベースのCMOS計装用アンプがある。これは、オフセットが2μVで消費電力はμWレベルである(講演番号4.2、4.4)。このほか、制御技術を使用して、DC-DC電源の複数の出力間で1つのインダクタを共有できるようにした設計がある(講演番号10.3、同10.5、同10.6)。さらに、1mm2当たり0.5W以上を供給できるスイッチド・キャパシタ・チャージ・ポンプがある。このほか、Si(シリコン)の熱時定数を有効に利用し、集積した周波数基準もある。補正することなく、±0.2%の精度を達成でき、優れた温度安定性が得られる(講演番号4.1)。

 データ・コンバータもアナログ技術の重要な要素である。100Mサンプル/秒以上でサンプリングを実行しながら100dBを超える直線性を実現したマルチキャリアGSM基地局用のコンバータがある(講演番号16.1、同16.2)。SN比が110dBで、消費電力がわずか500μW(0.04mm2のダイ)のCMOSオーディオA-D変換器がある(講演番号16.7)。MRIやデジタルX線といった用途に向けた医療計測器向けの18ビット、12.5Mサンプル/秒のA-D変換器もある(講演番号21.1)。心臓の鼓動を検出するシグナル・プロセッサもある。これは、消費電力がゼロに近く(30μW)、電池1個で数カ月も動作し、その間患者をモニターできるというものだ(講演番号6.6)。

 センサーもそろっている。例えば広範囲な温度計測用のものだ。補正が不要で5℃~125℃にわたって±0.2℃の精度を保つセンサーがある(講演番号17.4)。圧力に関心がある技術者向けには、血圧や眼圧を測定する医療機器向けの圧力モニター・システムがある。消費エネルギが既存のモニターの20万分の1と小さい(講演番号12.2)。

 これ以外にもセンシング関連の話題がある。例えば80×60画素の画像センサーを内蔵した測距器だ(講演番号22.7)。もっと小さなものもある。生きた昆虫が飛ぶ様子を無線で自動記録できるほどだ。消費電流が19.2μAで通信距離が3mの超低電力の受動型RFIDシステムを用いるもので、生きた蛾(ガ)に搭載できるほどだ(講演番号2.8)。

 無線分野についても、明日使えるような技術から、新しい応用例までさまざまな論文や発表がある。例えばCMOS技術を用い、クロック・ジェネレータとアンテナ・アセンブリを内蔵した77GHz帯のミリ波レーダーだ。車載用途で必要とされる100m先を検知する能力を持っている(講演番号11.2)。また2行2列のビーム・フォーミング・トランスミッタを用い、60GHz帯での水平走査と垂直走査を実現してた素子もある(講演番号2.3)。ソフトウエア無線にも新たな前進があった。実用化はもう目と鼻の先である。A-D変換器をRFのフロントエンドに接続するワイヤレス・レシーバーを備えたほか、900MHz帯で従来よりも実装コストを下げながら直線性を4dBm向上させた素子だ(講演番号3.5)。「全機能型」のシングル・チップもある。無線LANやBluetooth、FM無線の機能を備えており、2.4GHz帯で出力電力が23dBmのパワーアンプを内蔵している(講演番号25.3)。

 有線接続関連の話題もある。これまで発表された中でも最も効率的だと主張するレシーバ・イコライザだ。「伝送過程で損失したほとんどのデータを回復できる」という。これは驚くべき主張だ。最大39dBの損失を補償できるが、これは元の送信エネルギのわずか1.4%に相当するエネルギである(講演番号8.5)。

 「デジタルの木々」から目を離すと、「ISSCCという森」には多数の「アナログの木々」も存在していることが分かるだろう。。

記事一覧

PR

@IT Sepcial