【ISSCC 2010】コグニティブ無線の実現に向けた技術が続々登場

半導体関連の国際学会「ISSCC(IEEE International Solid-State Circuits Conference)」(2010年2月7日~11日、米カリフォルニア州サンフランシスコ)では、「コグニティブ無線」を現実のものにするさまざまな無線技術が発表されている。このほか、SAWフィルタを排除したフロント・エンドや複数の無線通信規格や周波数帯に対応するSoC(System on Chip)、注目を集めている60GHz帯を使った無線通信技術など、近未来の無線通信技術の基礎となる発表もあった。
コグニティブ無線という用語を考案したJoseph Mitola氏は、この技術を「誰が、どんな無線通信技術を使うのか、どの周波数帯を使うのかを自動認識し、自然言語処理技術や画像処理技術、そして無線環境に関する高度な専門知識を駆使して実現する、非常に優れた無線通信技術」と定義する。つまり、コグニティブ無線は、あらゆる無線通信技術を統合した技術と言える。信号送信に必要な電力の制御や適応型周波数ホッピング(AFH:Adaptive Frequency Hopping)技術を利用した干渉の回避、複数の帯域を利用した通信を可能にする。
このような機能はコグニティブ無線の実現に必要な要素とMitola氏は考えている。そして、同氏は1つ1つの機能の進化だけでなく、「インテリジェント」な無線通信の実現を目指している。空いている周波数帯域や、干渉が発生する場所、ユーザーがどんな処理をしているのかといったことを検知し、干渉のない安定した無線通信の実現を目指す。コグニティブ無線の核とも言えるこうした機能の多くは、ソフトウエアで実現するものと見られている。しかし、インテリジェントな通信を実現するには、無線機器の設計を進化させる必要がある。
ISSCC 2010では、期待を集めている技術が一堂に会する。中でも今回特に注目を集めているのが、いくつもの無線通信方式に対応し、複数の周波数帯に対応する無線通信技術だ。米Broadcom社と米Qualcomm社の共同研究チームは、半導体チップのブロックを共有することで、Bluetooth、FM、無線LANの3つの無線通信機能を1チップのSoCに集積した技術を披露する。このSoCは、パワー・アンプも統合しており、-91dBmの信号も受信できるほど感度を高めた。このほか、ベルギーの研究機関であるIMECの研究チームは、100M~3GHzの周波数帯に対応し、複数の無線通信方式に対応できる40nm製造技術で試作したCMOSトランシーバを披露した。
米Analog Devices社は、携帯型テレビで韓国Samsung Electronis社に真っ向から勝負を挑む。Analog Devices社が披露する携帯機器向け放送の受信チップは、複数の通信規格と周波数帯に対応できる(講演番号25.6)。このチップは、65nm製造技術を適用しており、韓国で標準となっているDAB/T-DMB規格や日本で採用されているISDB-T規格のワンセグ放送、FM放送に対応する。消費電力は35mWで、T-DMB信号なら-103dBm、ワンセグなら-98dBm、FM放送なら1dBuVの信号まで受信できるように感度を高めている。講演番号25.7では、Samsung社が同じような機能を備えるSoCを発表する。同社のSoCも65nm製造技術を適用する。両社のSoCの比較も気になるところだ。
SAWフィルタを排除
半導体製造技術の発展により微細化が進み、複数の無線通信機能を1つのチップに統合する動きが加速している。これに伴って、SAWフィルタのような受動部品が占める空間の大きさやコストが大きな問題になってきている。このような受動部品を小型化するか、あるいは排除してしまえば、無線通信機能の統合はより進む。
この問題は今年のISSCCでも大きな話題になった。Broadcom社でEngineering部門のdirectorを務めるHooman Darabi氏が特別セッションを開くほか、いくつかの論文が出ている。特に、「ゼロIF(中間周波数:intermediate-frequency)」または、「ダイレクト・コンバージョン」と呼ぶテーマに注目が集まった。
IFを排除することで、無線機器はSAWフィルタを搭載する必要がなくなり、部品コストを抑えられ、機器内のスペースを余計に用意する必要もなくなる。しかし、IFを排除すると、無線信号が干渉の影響を受ける可能性が高まる。水晶発振器の信号が出力に影響することも考えられる。
東芝の研究グループはこの問題に対処する方法について解説した(講演番号25.4)。この講演では、ダイレクト・コンバージョンを採用したモバイルWiMAX向けSoC(65nmのCMOS技術で試作)を披露する。
携帯電話に関連する話題としては、米Texas Instruments社とオランダDelft Universityの研究チームが、SAWフィルタを排除したフルデジタルのEDGE対応RFトランスミッタを見せた。一方、スイスAdvanced Circuit Pursuit社の研究グループは、WCDMAとHSPAに対応する受信チップを披露する(講演番号3.3)。このチップもSAWフィルタを不要にしたものであり、チップにDC-DCコンバータを統合している。
注目を集める60GHz帯
無線を使った画像信号送信技術の規格が続々と現れている今、60GHz帯は各方面からの注目を集めている。無線LANに活用しようと考える技術者が多いようだ。ベルギーの研究機関であるIMECは、広い帯域に対応するビーム・フォーマを披露した(講演番号2.2)。60GHz帯向けのフェーズドアレイ・アンテナに向けたもので、40nmの製造技術で試作したものだ。
Delft Universityの研究グループは、65nmのCMOS技術で試作した60GHz帯対応の送信チップを見せた(講演番号2.3)。
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